□僕等マジック
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ふと我にかえって一歩後ずさると、黒板の端から端までゲジ先で埋め尽くされているのがわかった。
どちらの手も届かない上の端以外に数えきれないほどの立派な眉毛が描
かれている。
かたん、と音をたててちびたチョークを置くと、隣で最後の眉毛を描き終えた沖田も私に並んで目の前の絶景を見た。

「これは芸術だぜィ」

「うん、すごいアルな」

より正確に出来映えを把握するべく、二人で教室の後ろまで行った。
せーので振り返って見ると、そこにあるのは間違いなくゲジ先パラダイスだった。

「私たち天才かもしれないネ」

「お前、今更気付いたのか?」

そのまま数分間黙ってゲジ先たちの神聖なる楽園を眺めていた。



「おめーら何やってんだー?下校時刻だぞー」

「ぎ、銀八…!」

「なーせんせー、これ見てくだせェよ」

突然現れた想い人に驚き固まった私の横で、沖田は含み笑い。

「すげーなお前ら。立派なテロ行為だよ」

何にも知らない銀八は誉めてんだか貶してんだか微妙な感想を述べて、ちゃんと消しとけよと言って見廻りに戻って行った。

微かに残った煙草の匂いを、そっと吸い込む。

「変な顔してらァ」

「うっさいバカ」

そして沖田と小突きあいながら、ゲジ先たちを綺麗に昇天させていった。





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