□貴方の死体を前にして
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1、山崎

死んでみる空想などをして、鼻で笑って、目を開けた先の現実に、また生きる気をなくす。

何で殺しちゃったかな。その辺の記憶が曖昧だ。けれどこの両手にへばりつく血は、間違いなく自分が彼に流させたもので。

畳の上の血溜まりの中、真っ白な顔で彼は息絶えている。真っ直ぐに左胸を貫いている刃は自分の物だ。

言い逃れなんて出来ない。特にする気もない。今はそんなことより、ついでに自分も殺してしまうか否かだけが問題だった。

この人のいない世界に生きる意味なんて、きっとない。そう思いながらもなかなか死ぬ決意がつかないのは何故だろうか。我ながら情けないな。

そのうちに彼の不在に気付いた誰かがここを訪れるだろう。それまでには選ばなければならない。

無意味な生か、
誰かの裁きか、
死出の門出か。

ねえ副長、なんで簡単に殺されてくれたんですか。

死人に口はない。答えのない問いは虚しく宙に溶けて消えた。




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