話
□貴方の死体を前にして
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2、高杉
殺してしまいたいも、殺されてしまいたいも、共に生きていたいも。俺のあらゆる感情全ては、お前への愛の前では矛盾しない。
だから今、心を許しきって眠るお前の喉を俺が切り裂いたとしても、それは少しもおかしくないことなのだ。
「俺なんかを捕まえたお前が悪いんだぜェ?」
囁いて、鞘から抜いた小太刀を振りかざす。
月光を反射させる刃が美しい。
白い顔で眠るお前はもっと美しい。
二つ合わされば、もっと良くなるんだろう?
「し、んす…け…?」
「綺麗だな、十四朗」
首に突き立てた刃を、そのまま横に引き抜いた。
一瞬で目の前が赤くなる。
脳全てが痺れるほどの強烈な香り。
温かい。
「愛してる」
だから一緒に死のう。
我ながら、筋のとおった美しい感情だ。
濡れた刃を一振りし、研ぎ澄ませる。
己の頸動脈を裂いた。
終