□愛玩カウンター
1ページ/3ページ


「お前、それは警戒しすぎだろ」

「うるせェ。早く帰れ」

「哀れな鍵っ子にそれはねェだろォが」

「人脅して押し入っておいて何言ってんだ」

放課後。俺は結局、鍵を忘れた高杉を家に迎え入れていた。
本当は全力で逃げるつもりだったのだが、沖田に言うと脅されて従わざるをえなかったのだ。

首を触られると全身虚脱状態に陥る。そんな弱点をあのドS王子に知られれば、俺には二度と安息の日々は訪れまい。
高杉に知られた時点で手遅れな気もするが、過ぎたことはもうどうしようもないのだ。前を向いて生きるしかない。

なんとしても二度目の攻撃は避けようと、俺はクローゼットの奥から引っ張り出したマフラーを首に巻いていた。更に念には念をいれ、高杉から一番遠いベッドの端に避難している。

高杉は文句を言いつつも、とりあえずは小テーブルに出されたコーラを飲んで大人しくしていた。

早く夜にならないだろうか。そう願って何度も壁の時計を見るが、なかなか時間は進まない。

「ゲームしねェ?」

「ぼくなつあるぜ。一人でやれよ」

「あんなたりィのやってられっかよ。お、鉄拳あんじゃねェか、やろーぜ」

「一人でやれって」

高杉は勝手にテレビ台に並べられたゲームを物色し、俺の言葉を無視してコントローラーを投げて寄越した。

「お前が勝ったら帰ってやるよ」

「…言ったな?」

振り向いた高杉の後ろに、見慣れたオープニング画面が映る。馬鹿め。一体俺がどれ程このゲームをやりこんだと思っているのか。

ぎゃふんとも言えぬ早さで、帰らせてやる。

マフラーを少し弛め、コントローラーを強く握った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ