□愛玩カウンター
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「くそっ、もう一回!」

「何度でもやってやるよ」

気付けば、望んでいた夜などとうにやって来ていた。それなのに俺は、何故か高杉に一勝も出来ずにいる。
最初は、暫くやっていないせいで感覚が鈍っているのだと思った。しかし何度対戦を繰り返しても負け星を積み上げていくばかり。
このままじゃ終われないと再戦を挑み続けた結果が、この状況だ。さっさと帰したかったはずの男を引き留めている。

暑くなって、マフラーなんてとうに外していた。自分の弱点より相手キャラの弱点の方が重大だった。しかしどんなに隙をついたつもりでも、高杉は俺の攻撃を潰して反撃に出てくる。

そして、また、負けた。

「なんで…」

「まだやるかァ?」

「…もういい」

力なくそう返して、長時間握りっぱなしだったコントローラーを手放した。汗の滲んだ手のひらをシャツの裾で拭う。
酷使し続けた目が痛かった。両手で押さえ、指で瞼の辺りを揉みほぐす。

鉄拳で俺に勝てる奴なんて中学の頃にはいなかった。その俺がまさかここまで完敗するなんて。所詮は井の中の蛙だったということか。

なんだっていつもこいつには敵わないんだろうか。今日だってみっともない姿を見られて、それをネタに脅されて、情けないことに反撃の一つも出来なかった。

我が身の情けなさに涙が出そうだった。両手のひらで押し止めて、代わりに溜め息を吐いてやり過ごす。

「隙だらけじゃねェか」

「なっ、近寄るな!」

いつの間にか、高杉はすぐ近くに立っていた。

逃れようとする。それよりも早く、高杉が俺の首に触れた。
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