話2


□真剣ソルジャー
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一つだけ、はっきりさせておこう。

俺はあの日、土方を泣かせるつもりなんてなかった。あれは事故のようなものだったのだ。

そりゃあ涙目で睨まれるくらいのことは期待していた。なにせあの顔ほど俺の加虐趣味を満足させてくれるものはない。

決して屈しない、いつかやり返してやる。そんな声が聞こえてくるような表情は土方でしかお目にかかれない。その他は男も女も簡単に恍惚としだすから興醒めだった。

気に入りの玩具。俺にとっての土方は簡単に言ってしまえばそんな存在だ。支配するのは俺の方で、俺が飽きればそれっきり。そうなると思っていた。

なのに何故だ。

土方の見せた涙は、そんな上下関係を一瞬にして引っくり返してしまった。

あの日、俺は思い出したくもないくらい慌てた。慌てて謝りまくったし、土方の身を案じもした。それまで取っていた態度とは大違いだ。高杉晋助人生初の百八十度の大回転。

気付けば、泣いていたはずの土方はニヤニヤ笑って俺を見ていた。急に恥ずかしくなり、部屋を飛び出して夜の道を走って帰った。

それからここ数日、何故か土方のことしか考えられない。飽きる気配なんてない、というか日に日にハマりこむ一方だ。

対する土方は、俺に対して以前より強気になった気がする。おそらく涙を見せたことで、そしてその涙が俺を怯ませたことで、なんというか、開き直ったのだろう。

何かしてきたらまた泣いてやる、そんな脅しをかけられている気がした。これでは迂闊に手が出せない。あの涙をもう一度見たらきっと、俺の脳は容量オーバーで爆発してしまう。

こんな展開を一体誰が予想出来ただろうか。万馬券どころの騒ぎじゃない。

何にせよ、分が悪いのは間違いなかった。そんなのはプライドが許さない。しかしどうすればまた俺は優位に立てるのだろうか。

全くと言っていいほど授業を聞かず、俺はそんなことを考え続けていた。
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