話2
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風に煽られて、神楽の珍しく纏められていない髪と、短い紺色のスカートが踊っている。
メデューサのように暴れる髪は放ったらかしで、神楽は今にもパンツを見せそうなスカートを押さえるのに四苦八苦していた。
こっち来て座ったらどうでィ?と沖田は神楽の後ろ姿に声をかける。
しかし彼女は無反応だ。代わりに風がひときわ大きくスカートを捲りあげた。
沖田は小さく笑みをもらす。
「パンツ見たり」
神楽が振り向く。上がった口角を隠すことなく、沖田は手招きをする。
「んな所に立ってるからだぜィ。そもそもスカート短すぎだろィ」
予想に反し、神楽は顔を不快げに歪ませたり罵声を浴びせかけたりしてくることもなく、無表情にその場に座り込んだ。
「こっち来いって」
乱れた髪に邪魔されて、俯く神楽の顔を見られなくなった。
なんからしくねェなァ。
頬を掻きながらその理由を考えてみる。ブルーデイってやつだろうか。いや、一昨日終わったはずだ。知ってる自分が少し怖い。
「どうしたァ?」
返事はない。吹き荒れていた風さえも、止んだ。沖田は立ち上がり、神楽のすぐ傍まで寄った。
足音は聞こえていたはずだが、それでも神楽は何のリアクションも取らない。
今日は全く神楽の声を聞いていない。いつもの暴言が飛んでこない。
「親父となんかあったのか?」
沈黙は肯定なのだと沖田は経験的に知っていた。
沖田は神楽の横に座り込んだ。喋りたくないならそれでも良い。こんな日もたまには悪くない。
「二人でどっか行っちまうかィ?」
沖田は曇天を仰ぎながら言った。
「…一人で行けヨ」
数秒おいて、小さな声で神楽が言った。
終
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