話2


□ひなんくんれんはいみをなさない
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ヤバイ。そう思って走った。特別速いとはいえないこの私のスピードに、奴はどのくらいで追い付くのだろう。とにかく地面を蹴って、蹴って、蹴って。

だって聞きたくない。
それはある意味死刑宣告に等しい。

急に右腕に力がかかって足が進まなくなって、振り向くまでもなく捕まったのだとわかった。

荒い呼吸の音が2つ、重なったりずれたりして少しの間続いた。

私はすぐそばの咲いているつつじの花を見ていた。いっそ、私もこいつも物言わぬ花だったなら。

私の腕を引いて無理やり振り向かせた沖田は、もうすっかり呼吸を整えていた。
悔しくて、少し上にある顔を睨み付けた。昔は私の方が見下ろしていたのに。

「さっきの…」

ついに、沖田が口を開いた。手を振りほどいて逃げようとしたけれど、敵わなかった。

「言わせろィ」

「嫌アル」

空が青いのは何故なんだろう。現実逃避にそんなことを考えた。
本当は耳をふさいでどこかに飛んでいってしまいたかった。

「俺は、お前が、好きだ」

わざと、沖田はゆっくり言った。聞こえなかったふりは出来なかった。
空が落ちてくればいいのにと思った。

捕まれた腕が熱い。沖田は私を見下ろすのをやめない。
こんなときは一体どうしたらいいんだろう。そんなこと、大人は教えてくれなかった。




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