話2
□三度!
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押し倒してもダメ、脱いでも効果ナシ。肉食女子のプライドをかけた2度の戦いに負けた後、私はすっかり自信を失ってしまっていた。もちろん諦めるつもりは毛頭ないのだが、どうも攻めあぐねている。
沖田は相も変わらず暇さえあればアイマスクを装備して居眠りだ。もういっそ夢の中でもいいから私を襲っちゃくれないだろうか。
「で、なんで俺に相談するんだよ…」
「お前ならあいつの攻略法を知ってるはずアル」
「知ってたら毎日苦労しねェ」
マヨラーはそう言いながらも一応腕を組んで考え出した。多分なんだかんだ言ってこうして面倒見の良いところが、あいつを助長させる一因となっているのだろう。ついもっと無理を言って困らせたくなるタイプだ。
「このままじゃ私、欲求不満で暴発するアル」
「…女子学生の性犯罪って笑えねェぞ」
まぁ既に犯罪すれすれの行為はしているわけだけど。でもこのままくすぶり続ければそのうち本気であいつのズボンを脱がしかねない。ズボンついでにパンツもいくだろう。そんな飢えた熟女のような真似はさすがに避けたい。
「早くなんとかするアル、トッシー」
「その呼び方やめろ」
「仲良く逢い引きかィ?」
危うく、漫画のように椅子から転げ落ちそうになった。マヨラーも目を丸くして、突然教室内に現れた沖田を呆然と見ている。一体いつからいたのだろう。足音はもちろん気配なんてものは少しもなかった。忍者かこいつは。いや違う、ただのクラスメイトだ。嘘、それも違う、私の想い人。
なもんで、椅子から落ちそうになったことへの驚きも相俟って私の心臓は今とんでもない速さで拍を打っている。このままでは寿命が縮まってしまうに違いない。なんて遠回しな殺人なんだ沖田よ。
「…な、なんの用アルか」
「俺は自分で考えろって言ったんだぜィ?」
なんてこった。こいつ最初から聞いていたのか。羞恥で固まる私の前でマヨラーがおもむろに立ち上がった。
「帰るわ」
「ちょ!見捨てるアルか?!」
「自力、が答えなんだろ?頑張んな」
「そんな!」
それが出来ないから恥を忍んで聞いたというのに。悲痛な声をあげた私にあっさりと別れの言葉を告げて、薄情なマヨラー野郎は教室から出ていってしまった。