話2
□失望アタッチメント
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高杉の爆笑を聞くのが日課になった。
同時に、首に触れられることによる全身脱力も、残念ながら最近の日課だ。
毎日隙あらば繰り返されるこの勝負は、いつも引き分けだった。
「お前といると落ち着く暇がねェ。俺の平和な日々を返せ」
「毎日つまらなさそうな顔してた頃よりマシだろォが。つーか仕掛けてくんのは大概自分じゃねェか」
「お前に手出されてからじゃどうにもなんねェんだからしょーがねェだろ!」
手を伸ばしても届かない距離を保ちつつ、俺と高杉は互いに隙が出来ないかと窺いあう。一人ぼんやりとする為の場所だった準備室は今や戦場だ。気が抜けない。
それでも毎日こうして授業を抜け出してここに来てしまう。きっと、サボるのが習慣化しているせいだ。それ以外に理由なんてない。
「ぼーっとしてっと、喰っちまうぜェ?」
「てめっ…!」
一瞬の思考の隙をつかれた。いつもは俺が動くまで手を出してこないから、つい油断をしていた。こいつがそんな大人しい奴ではないと知っていたはずなのに。
触れられた部分が開け放たれた空気穴になったかのように、そこから一斉に力が抜けていくような感覚。
後悔で歯噛みしようにもその力すらない。腕を引かれ、その力の流れに逆らう術もなく高杉に凭れかかった。
「十四郎」
「…離れ、ろ」
耳元で囁かれるだけのことですら、今の俺の体には結構堪える。一音一音に合わせて高杉の口から放たれる息が、情けないくらい敏感になった俺の体を震わせた。
「お前が俺から離れねェんだろ?素直になりな」
離れないのではなく、体に力が入らないから離れられないだけだ。そんなことこいつがわかっていないわけがない。本当にどれだけ人をバカにすれば気が済むんだこの男は。
「…俺は…テメェの玩具じゃ、ねェ!」
「玩具だなんて思っちゃいねェよ」
不意に首筋をきつく吸われ、過ぎた刺激に息が止まる。どこかに掴まりたい気持ちになるがその力はないし、あったとしたって近くにあるのは高杉の体だけだ。そんなことすれば大喜びでまたからかってくるに違いない。
「恋人ってことにしねェ?」
「は?」
一足飛びで出てきた提案に、脳すら虚脱したように働きを止めた。