話2


□鳴り物入り
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「ふられたんでござるな?」

「…殺すぞ」

物騒なことを言いつつも、晋助の目や口調に殺人を犯せるような力はない。よほど参っているのだろう。常に傲岸不遜な態度を崩さない男なので、普通なら決して見られない姿だ。

面白いものを見たという充足感を得た反面、そうさせたのが自分ではないという物足りなさを感じる。とうに諦めたつもりではあったが、自分の思う以上にこの恋心はしぶといらしい。

食べ終わったカレー皿の上にスプーンを置くと、小さな金属音がした。その高い音の響きは何故か癪にさわり、無意味とは思いつつ静かにまた置き直す。

晋助はそんな行動などにはまるで注意を払わず、食堂のテーブルに肘をついてあらぬ方を見やっていた。きっとあの男のことでも考えているのだろう。傍にいるのになんと遠いことか。

気分を変えようとプラスチックのグラスから水を飲むが、既にぬるくなっていた液体は物足りなさを加速させるだけだった。

「ただの玩具になにを振り回されているんでござるか」

「今は、違ェんだよ」

「晋助がそう思っていても向こうは信用しないでござろうよ」

少し意地悪く言った言葉は図星だったらしく、晋助は歪めた顔を俯かせて、すっかり冷めたであろうコーヒーをかき混ぜ始めた。ひしひしと伝わる後悔の念。本当に本気で想っているのだろうと、改めて思い知らされる。

「どうしたらいい?」

あまりにもらしくない質問がテーブルの向こうから投げ掛けられた。思わずもらした苦笑に、晋助は傷ついたような表情を浮かべる。こんな顔も出来たのか。

反射的に可愛いと思ってしまう自分はきっと、晋助の求めているものを与えてやることは出来ないのだろう。それでも、これほど弱っている今ならもしかしたら、少しは受け入れてもらう余地もあるかもしれない。

「晋助、一つ提案があるのだが」

「なんだ?」

「玩具にされる側の気持ちも知るべきでござるよ」

やっと真っ直ぐこちらを見た晋助にむかい、疑いなど持たせぬように強く、言ってみた。







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