話2
□おとなとこども
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恋人っていうのはもっとこう、慈しみあうものじゃないんだろうか。
って、首を絞めてる俺が言うのもおかしな話。
絞められている人は完全に無抵抗で、もう既に死んだかのように全身の力を抜いて横たわっている。けれど上下する胸板は、その生を強く主張するかのように動きを速めていた。
「首絞められて興奮してるんですかィ?この変態」
吐き捨てるように上から囁いてやると、長い睫毛が僅かに震えた。
やがて伏せられていた青白い瞼が消え、代わりに黒々とした硝子玉のような瞳が現れる。狸寝入りは終わりにしたらしい。
この人の目は、俺をものすごく苛々させることがある。
絞めつける手に力を込め直すと、掌の下で喉仏が震えた。さすがに苦しくなってきたのか、離せと言うように乾燥した薄い唇がいじらしく動く。
そんな無言の訴えは完全に無視。ますます両の手の力を強めていく。見開かれた目は充血し始め、らしくもなく涙すら浮かんでいた。よほど苦しいのだろう。可哀想に。
素知らぬ振りで、ギロチンの刃を放つように自らの瞼を落とした。
「これが、俺の愛です」
だから、このまま、死んでくれ。