話3

□新年だからさ
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「さっきから栗きんとんばっか食ってねェ?」

「これ好きなんだよ。それにお前は食わねーだろ?」

輝くような黄色を纏った栗を、落とさないよう慎重にまた一つ口に運ぶ。ぶわりと口内に広がる糖の味が、酒の酔いとも相俟って俺の意識を極楽へと誘った。甘いものはやっぱり良い。それは年が明けようがなんだろうが普遍的な事実だ。ちょっと奮発して買った甲斐があった。

「よく酒呑みながらンな甘いもの食えるよな」

「刺身にマヨネーズかけられる方がすげーよ」

そーか?とちょっと嬉しそうに口の端を上げて、土方は小皿に取った鮪にマヨネーズをかける。正直見てるだけで気持ち悪いけど、言うと喧嘩になるから黙って目を逸らした。
好きになったら痘痕も笑窪とか言うけど、無理なもんはやっぱ無理だろう。きっと一生連れ添っても慣れない。なんて、どさくさ紛れに心の中で永遠の愛を誓ったりして。俺ったら照れ屋さん。

「なにニヤニヤしてんだコラァ」

「え、いや、別に…つーかお前酔ってね?」

よく見れば土方の顔は頬を中心にほんのり赤らみ、いつもは鋭い両の目も力を失っている。しかも小首を傾げて俺を見ているものだから、そりゃもう…めちゃくちゃ可愛かった。

「酔ってねェ。…これしきの酒で酔うか」

「じゃ、俺に酔ってる、とか?なんつって…」

調子に乗って言い出して、語尾に至る前に自分の発言の痒さに気付いた。俺も結構酔ってるかもしれない。もちろん酒にも土方にも。

「酔ってねェよ」

「だよね…」

あっさり返された答えに、そりゃそうなるよなと思いつつちょっとへこんだ。新年初ツンは通常より威力が大きいらしい。
グラスに残った酒を一気に飲み干す。

「酔っちゃいねェけどよ…今年も、お前と一緒に…いてェ」

「え!?」

突然のデレに驚くと、照れたのか土方は俯いてしまった。

え、なにこの子可愛すぎるんだけど。新年初デレの破壊力半端ない。つーかこれはアレだよね?姫初め開始の合図ってことでファイナルアンサー?銀さん、今年も頑張っちゃうよ?

「今年もこれから先も、ずっと離さねーよ?」

囁いて、俯いた顔を覗きこむ。

と、

閉じられた目と安らかな寝息がそこにはあって…

「…やっぱ酔ってんじゃん」

がっかり半分と愛しさ半分で、脱力した土方の体を抱き締めた。






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