話3

□青春も黙りたい
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桂くんの場合

「土方、ちょこっといいか?」

「え?」

「ちょこっと言いたいことがあるのだが…」

「なんだよ」

「本当に、ちょこっと、なんだ」

「わかったから早く言えっての」

「…ちょこっと、でいいんだ」

「だから何を」

「チョコを、ちょこっと…」

「…なんで男が男にチョコやらなきゃなんねーんだよ。そんな虚しい日じゃねーだろ、バレンタインは」

「だから、ちょこっとでいいんだ!この際手作りなどとは言わん!コンビニので構わん…!」

「…わァったよ。買ってやるから、涙ぐむな」




高杉くんの場合

「受け取れ」

「…こりゃまた高そうな」

「五千円だ。まぁほとんど容器代だろうがな。食い終わったら灰皿に出来るらしい」

「これ、買ってきたのか?」

「あ?当たり前だろォが。女の数尋常じゃなかったぜ」

「…その度胸は素直に尊敬する」

「惚れたか?」

「曲解すんな。ほれ」

「?これ、お前…!」

「朝、桂にねだられて買ってやったんだよ。あいつだけにやんのも不公平だから結局全員分買ってきた」

「…お前、そんなぶっちゃけなくてもいいじゃねェか…」

「後で分かるよりいいだろーが。これで、貸し借りなしだからな。ホワイトデーに三倍返しとか求めるなよ?」

「…差額分を体で…」

「ざけんな!」



坂田くん

「で、俺の分も買ってきてくれたわけだ」

「つーかお前の部屋甘ったるい匂いすんだけど」

「一日中チョコレートケーキ焼いてたからなー。つっても起きたの昼過ぎだけど」

「どうりで学校で見ねェわけだ。人から貰うのは端から諦めてたのかよ」

「貰うと色々面倒くせーじゃん?その点自分で作りゃなんの後腐れもないっつーか」

「まぁ、わからなくはないけどな」

「このチョコ三号館前のコンビニで買ったろ?」

「おう、よくわかったな」

「一応全部チェックしたからよー。これコンビニのわりには本格的で。結構高かったろ?」

「そうだな、全員分買ったら結構飛んだ」

「一番欲しかったやつなんだよ。あんがとなー」

「…なんかやっと素直に感謝されたわ」

「まぁあいつらの欲しいものって、チョコじゃなくてお前からの愛だから」

「シンドイ、ムリ」

「なんで片言。まーとりあえずバレンタインお疲れ様ってことで。あ、ケーキ食う?さすがに一人で食いきるには焼きすぎたんだよ」

「貰う。しかし…男同士で交換しあうバレンタインってどうなんだ…」

「お前が早いとこ彼女作ればいんじゃね?つーかくれる奴いなかったの?」

「あーなんか知らねェ奴から貰ったけど」

「マジかよ!」

「ホワイトデーとか忘れそうだから、辰馬分のチョコを渡してやった」

「それってどうなの?」

「なんか妙な顔をしていたな」

「お前ってちょっと天然入ってるよな」

「入ってねェ」

「そういや、辰馬いま北海道にいるんだってよ」

「最近見ねーと思ったら、またか。あいつ留年確実だな」

「あの放浪癖は一生治らないだろうな」

「つーかこれ、美味い」

「だろ?」

「なんでお前女じゃねーの?」

「染色体に聞いてくれ」









桂も高杉も貰ったチョコは食べずに飾っておくと思います。

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