話3

□馬鹿野郎と意地っ張りと板挟みの俺
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結局、じゃんけん三回勝負に勝ったのは高杉だった。そんなわけで今は薄暗い社会科準備室でぐだぐだしている。
屋上だったら俺は今頃星になっていたに違いないからこの結果で良かったんだろう。一時の気の迷いで死んだらきっと化けて出るほど後悔する。幽霊が実在するか否かは置いといて。

この社会科準備室は俺たちが一番よく使うサボリ場所だ。

俺たちが居座る以外にろくに使われていないこの小さな部屋には、無駄にでかい地球儀やら無駄にでかい世界地図やらガラスケースに入った縄文土器やらその他もろもろの用途不明のものなんかが整然と積まれている。
もともとは雑然として埃っぽかったのだけど、潔癖症気味の高杉がわざわざ小型の掃除機まで持ち込んで綺麗にしたのだった。

今日も来るなり一通り床を掃除し(昨日もしたんだから大して汚れてないのに)、今は専用の椅子に腰掛けている。
その正面にいる土方は「こいつに見下ろされるのは気にくわねェ」と言って古い教科書の入った段ボールをいつも椅子代わりにしている。

床に座っているのは俺だけだ。物心ついてから今の貧乏アパートで暮らすに至るまでずっと和室暮らしだったから、その方が落ち着けていいのだ。けれどなんとなく地位の低さを自ら体現しているようで切なくもある。

気取られない程度に視界を左右に振り、小さくため息をついた。

「そーいや銀時は今日バイトねーよなァ?」

「ねーけど…遊びに行く金なんかねーぞ」

俺は天下の苦学生なのだ。ボンボンのこいつに付き合って放課後に散財する余裕など全くない。

「んなこたァわかってんだよ。いいから帰り付き合え」

高杉の眼帯に隠されてない方の目が不敵に歪んだ。
行っても行かなくてもろくなことにはならんと脳内で経験が語る。しかしそんなものを聞いたところで解決策はわからない。

あぁまたよからぬことに巻き込まれる、そんな諦観が、唯一の救いと言えば救いだった。









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