話3

□8月はおわりました
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久しぶりに、土方が休みを取った。

という表現は、実は正確ではない。夕方まではいつも通り仕事をしてきたからだ。日付が変わる頃までやってる毎日と比べたらマシだけど、こんなもん休みでもなんでもない。
それでも、とにかく俺のために時間を作ってくれたのは事実だった。

「ったく、夏だからって浪士共が浮かれやがってよー。仕事増やすんじゃねェっつーんだ」

「たしかに8月は仕事増えるよな。おかげでいつもよりパチンコ行けたわ」

神楽を新八の家に預けて、今夜は二人きり。ちょくちょく巡回中にちょっかい出したりはしていたけど、こんな風にゆっくり過ごすのは久しぶりだ。
幸せと小豆を主な肴にして、気持ちよく酒を啜る。

扇風機が、並んで座る俺と土方に交互に風を送っていた。今夜は、熱帯夜とは言わないまでもそれなりに蒸し暑い。結露したグラスを首筋に押し当てて、僅かな涼をとる。
残暑が図々しく居座る9月は、8月の延長のように思えた。俺が毎日夏休みのような生活を送っているせいもあるかもしれない。

「しっかし、相変わらずのダメっぷりだなテメーは」

「土方は相変わらず可愛いな」

そう言うと、既に酔いで赤らんでいた土方の顔は、ちょっと心配になるくらい真っ赤になった。いまだにこういう新鮮な反応をくれるところが堪らない。頭から舐め回したくなる。実際それやると殴られるけど。

少し身を寄せると、もともと近かった距離が消えた。袖をまくりあげて顕になった、肌と肌が密着する。

「なぁ、キスしてもいい?」

「…んなこといちいち聞くんじゃねェよ、バカ」

「いやー…したらもう朝までノンストップになっちまいそうだからさ、土方は大丈夫かなーと」

「…そんなヤワじゃねェ」

「…あー、もう、マジおまえ可愛いわ」

そう言ってわざと唇の端に口付けると、噛みつくようなキスを返された。







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