話3
□三人寄ればA
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潤んだ瞳、赤らんだ頬。
白く滑らかな肌に、艶やかな漆黒の髪。
喉が鳴る。目が離せない。
早く術を解かなければ、互いに好きになりすぎて離れられなくなる。
とうはそう言った。
馬鹿みたいな話だが、高杉は信じた。さっきから自分の心に生じていた妙な感情にも、これで納得がいく。天人の訳の分からぬ術の効力がこちらにまで及んでいたのだ。
だから腕の中の幼子が愛らしく見えてしょうがないし、目の前の美しい少年から目を逸らすことが出来ない。
「嫌だ!こんな奴好きになんかならねェし、キスだってしたくねェ!」
「俺はお前のことも結構気に入っているんだがなァ」
睨みつけてくる、しいの視線を受け止める。懐かれるのも照れる姿を見るのも悪くないが、こうして拒絶されるのが正直一番愉快だ。どうやって素直にさせてやろうか、考えるだけで口角が上がる。
「ぶっ殺してやる!」
「ほォ?お前一人で俺に勝てるか?」
「当たり前だろ、子供の姿だからってなめんじゃねェぞ!」
「なら、やってみるか」
高杉は膝の上のろうを降ろし、立ち上がった。しいは今にも斬りかかってきそうだ。高杉も刀を抜く。
とうとろうは黙って見守っていた。
「来いよ、ガキ」
「うっせェ!」
しいがコンクリートの床を蹴り、高杉の懐を目掛けて飛び込んでくる。天井の穴から射す光で、刃が鮮やかに煌めいた。動作は素早く、狙いも的確だ。迷いもない。しかし、高杉の敵ではなかった。
真直ぐに向かってくる切っ先を自らの刀の先で軽く弾く。それだけで、しいの手から脇差が飛んだ。
「なっ……!」
「センスはあんだがな。まだ手が小さすぎるし、力もねェ。諦めろ」
絶句して立ち竦む少年の黒髪に、高杉はゆっくりと左手を伸ばす。滑らかな質感は想像を越える心地よさだ。
「や、やめろ!」
しいが高杉の腕を掴む。
しかし、抵抗はそれきりだった。