話3

□三人寄ればB
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ろうを包んでいた光が完全に消える。

今度は、感傷に浸る余裕がなかった。首筋の冷点が盛んに緊急信号を送ってくる。頸動脈を狙って定められた刃は、高杉がどんな行動を取るよりも速く、血管を切り裂くだろう。

「互いの立場を、忘れたわけじゃないだろう?」

とうの静かな声。
殺気は感じられないのに、死の気配は濃厚だ。無理心中でもするつもりかもしれない。たしかに、良案だと言えなくもなかった。
いくら愛し合ったところで、相容れるわけにはいかない二人だ。

それでも、共に生きたいと思った。呪いだかなんだかによって生まれた想いではあるが、それがなくてもいつかこうなっていたような気がする。

たとえ百万の人間が無理と言っても、関係ない。

「どうにでもなんだろ」

「そんなわけ……」

「どうにかする、って言ってほしいか?」

「…………」

「おまえは、いや、おまえらは俺が護るから、安心しろ」

「…………」

少しの間があって、刀は収められた。

高杉が振り返ろうとした瞬間、強く肩を掴まれ強引にとうの方を向かされる。
声を出す猶予もなくそのまま、口付けられた。

言葉はないまま首に手が回される。高杉は応えるようにとうの細い腰を抱いた。交わりは深くなる。唇を舐めると涙の味がした。目をきつく閉じたまま、とうは少しずつ光へと姿を変えていく。

高杉は唇を離して言葉をかけようとしたが、片手で後頭部を押さえられ拒まれた。

光は一際眩さを増して、もう目を開けていられない。高杉は隻眼の瞼を下ろし、その他の感覚に神経を集中させた。


 

 




 
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