話3

□三人寄ればB
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腕の中で、少年の体が変化していく。しいとろうの時とは違い、実体を失っていくのではない。成長している、そんな感じがする。

見ていたいと思ったが、あまりの眩しさに薄く瞼を押し上げることすら出来なかった。

閉ざし続ける瞼の裏には、スクリーンに浮かぶように、三人の姿が入れ替わり立ち替わり現れては消える。複雑な思いで、高杉はもう触れられない者たちの記憶を反芻していた。




ふっ、と唐突に光がなくなり、高杉はゆっくりと目を開ける。

腕の中、すぐ傍に彼等の面影を残す一人の男がいた。土方、十四郎だ。

「……こういう時は、初めましてとでも言うべきか?」

「ここで会ったが百年目、じゃねーか?」

真顔で軽口を叩きあって、二人は暫し口を閉ざす。その間、空を飛ぶ天人の船の音が、崩壊しかけのビルの中を満たした。

「あー……、なんつーか、迷惑かけたな」

「記憶、あんのか?」

「大体な」

決まり悪げな笑みを口の端に浮かべ、土方は頷く。あの三人は見せなかった表情だ。

「おまえは、消えやしねェよな?」

「そのはずだが……、試して、みるか?」

「くくっ……、なら、お言葉に甘えて」

小さな不安を擦って消すように、指先で顎の輪郭をそっと撫でてから、高杉は土方に口付けた。

煙草の味がする。唇は彼等ほど柔らかくはなく、少しかさついていた。それでも、『とう』と『しい』と『ろう』の存在をたしかに感じる。

深くまで味わいながら、高杉は土方の体に手を這わせた。本当に消えやしないかと、確かめるように。

「……んっ、おまえ、どこ触って……っ」

慌てたように体を離そうとする土方をしっかりと掴まえておく。
二人分の唾液で濡れそぼった唇の端を舌先で舐めあげ、そのまま耳元へ口を寄せた。低い声で囁きかける。

「さっきまで我慢してたんだけどよ、もう限界だ。子供じゃねェんだし、犯罪にゃならねェよな?」

「……っ、無理矢理は、犯罪だろ……!」

「嫌か?」

「……んんっ」

息を吹き掛けてやると、土方は少しよろめいた。舌を挿し込み耳の中を舐め回すと、土方の体から力が抜ける。そのままゆっくりと、床に座り込ませた。

「こ、の……、性急すぎんだろ……」

「散々おあずけ食らったんだっつーの。おまえも、そォだろ?」

背けられた土方の顔は、肯定の意思を示すように赤らんでいた。強がりな少年を思い出す。

「三人分愛してやっから、楽しみにしとけよ?十四郎」

「……望むところだ」

潤んだ瞳を細めて笑う土方を押し倒しながら、高杉は何度も何度もキスを降らせたのだった。






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