話3

□四人寄れば
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二人で借りた小さな隠れ家で、呪いに乾杯をした。

互いが背負っているものは、此処には持ち込まぬ約束をした。肩書きも過去も忘れた二人は、小さな卓袱台を前に並んで座っている。

土方はマヨネーズがいかに優れた食品であるかを力説しながら酒を呑み、あっという間にぐでぐでに酔っ払った。あまり呑める体質ではないようだ。

長い年月を生き抜いてきた体が、高杉に凭れ掛かってくる。土方は呂律の回らなくなった口で、それでもマヨネーズがどうのと話し続けている。

相槌を打ってやりながら、高杉は頭の片隅であの三人のことを想っていた。もう消えてしまった、愛しい子供たち。

「たーかすぎー」

土方が、間延びした声で高杉の名を呼んだ。

「ん?」

応えて顔を向けると、素早くキスをされる。酒に濡れた高杉の唇に、同じように濡れた土方の唇が重なって、すぐに離れた。ニヤリと、笑いあう。

今度はこちらからと高杉が顔を寄せるが、それより早く土方の体が傾いでいった。

あぐらをかいている高杉の膝を枕にして、土方は仰向けに寝転がる。

「眠いのか?」

「んー……」

もう微睡んでいるらしい。

この世の苦しみなど何も知らないような、安らかな顔が高杉に向けられている。あの三人も、土方の中で同じように休んでいるのかもしれない。そう思うと高杉の心も安らいだ。

優しく、土方の黒髪を撫でる。不摂生な生活を続けているせいか、少しぱさついていた。それでもその手触りは不思議と心地好く感じられて、暫く撫でたり梳いたりを繰り返す。

静かな部屋。外からは、空を飛ぶ船の音が聞こえていた。
一瞬、複雑な思いが過って、けれどすぐに幸福だけが胸に満ちた。

大事なものは、全て揃っている。

高杉は一人微笑んで、柔らかな寝息をたてる唇に、そっと口付けを落とした。






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