100のお題(1-40)
□016 掴めば、形成された。
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守らせてほしいなんて言ったら、怒るんだろう。プライドが高くて強がりなこの人をサポートするには、少しばかりテクニックが必要だ。
「土方さん」
腕を取って、引き戻して、抱き締めた。
「何してんだ」
「風が強いんで、危ないかなーと」
「なめんな。ぶっ飛ばすぞ」
「いやいや、危ないのは俺です」
「電柱代わりかよ」
「でもこれじゃ動けませんね」
「当たり前だろーが。離れろ」
「はーい」
おとなしく返事をし、体を離す。
「おい」
「はい?」
「…手」
「あぁ。これなら安全だし、歩けますから」
握った手を、訝しげに眉をひそめる土方さんの目の前まで持ち上げて見せる。また蹴られるだろうか。今度はもう避けられない。それでも、この手を離す気なんてない。
黒い線の横切る視界の中で、土方さんは呆れたようにわざとらしく溜め息をついた。
「…仕方ねーな…」
「ありがとうございます」
頭を下げると、照れ隠しかなんなのか後頭部をはたかれた。やっぱり力加減に容赦はなくて、風の音に混じって鈍い音が響いた。
手を繋いで、強さを増す風に向かって進んで行く。空いている方の手でまた髪を押さえ、行く先を見据える。濁った不純物だらけの春風に目を細めながら、それでも俺たちは進路を変えない。どれだけ困難な道のりであろうと、行くべきところがこの先にあるのだ。
たとえ何があろうと、俺はこの人と一緒に行く。
「つーか明日、マジで切りに行けよ」
「あ、土方さん切ってくれません?」
「いっそ剃りあげてやろうか」
「それは勘弁してください…」
終
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