高校生2

□0724
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このくそ暑い中、公園に集合だと言われ、イラつきながら木陰に一人立っている。
待ちたくないから集合時間より遅く来たというのに、誰もいなかった。特に連絡もないので、五分経っても来なければ帰ると決める。




あと四分。そう思った時、
びしゃっ、という間抜けた水音がした。
後頭部には濡れた感触。

振り向くと、ニヤニヤ笑う坂田がいた。

「……んだよ、これ……」

「水鉄砲から発射された水」

「そういうことを聞いてんじゃねェ!」

「いやあ、お前暑いと機嫌悪くなるからよー、涼しくしてやろうと思って」

「ざけんな!…っ?!」

びしゃっ、びしゃっ、と再び後頭部に水が掛かった。
振り向くとニヤニヤ笑う土方と山崎の姿。

「涼しくなったか?」

「水も滴るいい男ってやつですね」

「てめェらな……」

滴が首の後ろを伝い、服の中へと入っていく。冷たい水ならまだよかったのかもしれないが、むしろ湯と呼ぶに相応しい温度だ。不快でしかない。

「高杉さんのためにずっとスタンバイしてたんですよ?」

「そりゃァご苦労なこったな!」

言うが早いか、山崎の手から水鉄砲を奪った。
びしゃっ、と今度は背中を濡らされる。素早く振り向き、坂田の顔面に照準を合わせてプラスチックの引き金を引いた。

「ちょっ!目ぇ入った!目!」

「知るか」

土方と山崎にも一撃ずつ食らわせる。

「ひでェよ高杉ー」

「先に仕掛けてきたのはてめェらだろォが」

「高杉さん、覚悟!」

なぜかもう一丁持っていた山崎にまたやられたので、三倍にして返した。




公園から坂田の家までを歩いて行く。熱されたアスファルトの上には、夏休みなのに人気がなかった。暑すぎて子供すら外では遊ばないのだろう。

そんな中で小一時間も遊び呆けていたのだからバカらしい。

「いやー、テンション上がったわ。やっぱたまには童心に返らねーとな」

「ここまで白熱するならもっと本格的なの買えば良かったですかね」

「あー、今ってすげェのあるよなー」

「なんでもいいが、俺を巻き込むんじゃねェ」

「とか言いながら、高杉だって楽しんでたろ?」

土方がニヤニヤしながら俺を見た。
日に焼けて赤くなった顔を、汗なのか水遊びの名残なのか分からない水滴が落ちていく。きっと俺だって同じような状態なのだろう。
本当に、バカらしい。

「気のせいだろ」

もう空になった水鉄砲の先で、濡れたままの土方の頭を軽く小突いた。





それは、去年の夏の話。

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