高校生2
□ラタイ
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松平に渡されたメモを頼りに三人が辿り着いたのは、二階建ての古いアパートメントだった。
塗装が剥がれ錆び付いた鉄製の階段を足早に上る。綺麗とは言い難い字で書かれていた部屋番号は、206だ。奥へと急ぐ。そう距離はない。
入居者は殆んどいないらしく、郵便受けをテープで封じられた表札のない戸ばかりが横目に映った。
「ここだ」
数字の合致した戸の前で三人は立ち止まる。表札は付けられていないものの、郵便受けは開かれていた。差し込まれたらしいチラシが一枚、その薄い紙の端を覗かせている。
銀時がドアノブを回したが、鍵が掛かっているせいで開かなかった。その横で、山崎がチャイムを押した。
物悲しいほどに明るく軽い音が響く。中で、何かの動くような気配があった。鈍い足音が一つ、近付いてくる。
「遅かったじゃねーか」
薄汚れた戸を挟んで掛けられたのは、聞き覚えのない、低く嗄れた男の声。
鍵の開く音がした。
ドアノブは回り、戸が開かれていく。スロー映像のように、ゆっくりと。古びた蝶番のたてる高い軋みが耳を打つ。
三人は息を殺し、待った。
覚悟は決まっている。
土方を、護る。
その身も、心も、もう誰にも傷つけさせない。