話(連載)

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目に入った言葉に、銀時は顔をしかめた。
几帳面に並べられた細い文字列は、静謐な雰囲気に似つかわしくない物騒さを帯びていたのだ。
念のために二度繰り返して読んだが、その印象は変わらなかった。

一緒に政府を潰さないか。桂より

それが、長髪の男から銀時に送られた言葉だった。
否、まだ小さな文字で続きが書かれている。

PS.そのパーマ何処でかけたんだ?

完全に、馬鹿にされている。そう判断した銀時の腹は煮えくり返った。
もともと気の長い人間ではない。正直、今すぐボコボコにしてやりたいと思った。そんな憤りと、ぼろ雑巾のような理性が必死になって戦っている。

「…どうだ?」

追い討ちをかけるように、桂の囁き声が耳もとで放たれた。全身に鳥肌がたつ。男の耳打ちほど気持ち悪いものもなかなかなかろう。
音もなく自分の斜め後ろに立った桂の顔面を、銀時は思わず裏拳で殴りつけていた。どさりと音をたてて桂が床に倒れた。

と同時に自分の頭頂部を思いきり叩かれ、自分は木製のカウンターに顔面から突っ込む。
店には鈍い音が響いたが、奥のどんちゃん騒ぎにかき消された。カウンターに目を向ける者はいない。

「痛ェなクソババァ!」

頭頂部と鼻を両手でさすりながら、銀時はカウンターの向こうのお登勢を睨んだ。
客に手を出せばこうなることは予めわかっていた。それでも実際に殴られれば怒らずにはいられない。

「店ん中で暴力振るうなって何度言やわかんだい、クソ天パ」

「そうか、それは生まれつきなのか」

何事もなかったかのように起き上がった桂をもう一度殴り付けてやりたかったが、それ以上に身の危険を感じたのでやめておいた。次は鼻が潰れないとも限らない。これ以上上半身にコンプレックスが増えるのはごめんだ。

桂のことは無視することに決め、銀時は目の前に置かれたパフェを食べ始めた。
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