話(連載)
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上空からのアングルで、その戦いは記録されているようだった。
路地裏は月明かりに照らされて、舞台のように見えなくもない。どうやら役者も揃っているようだ。予想より人数が増えているのは、ストーリーを盛り上げる為だろうか。
標的となった四名を挟み、味方が二と五に別れた計七名。敵方はいずれも裏の世界では知名度のある人間だ。想定外の二名にも見覚えがあった。
四名の緊張感が画面越しにでも伝わってくる。手練れであってもこの急襲には肝を冷やしたことだろう。否、場数を踏んでいるからこその慎重さか。そうでなくては生き残れない。
追手を派遣した自分から見れば、勝敗は明確だった。あんな出来損ない共には最初から期待などしていない。せいぜい足掻いて、僅かでもデータを取ればそれでいいのだ。あとはこちらで分析する。
しかし、上からの視点というのが気にくわなかった。
なるべく広い場所に誘い出すよう指示をしたというのに、何を間違えたのだろうか。これだから下等な戦闘員は嫌いだ。
奴等の、化け物の顔が、見たかった。どんな表情で人間を殺すのか。それが何よりの関心事だった。
正直、戦い方などは二の次だ。人数と最新の武器で攻めれば最終的にこちらが勝利することはわかりきっているのだから。
戦いが始まる前のところで一時停止を押し、伊東は溜め息をついた。篠原が入れた茶を啜り、僅かに波立った気持ちを落ち着かせる。
「第二陣は送っているんだろうね?」
「はい、十五名に付近を捜索させています」
「君はよくやってくれているよ」
伊東が労いの言葉をかけると、篠原は一礼をして空になった湯飲みと共に部屋を出ていった。足音が聞こえなくなるのを待ち、伊東はまた画面に向き直る。
「あくまで今のところは、ね」
そう呟いて、再生ボタンを押した。
記録時間はそう長くない。時折一時停止を挟みながら、敵の出方を分析する。
けれど気持ちの方は、次に送られてくるであろう映像へと既に移っていた。