話(連載)

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「遅いな、坂本の奴…」

桂がここに着いてから既に三十分は経ったはずだ。約束の時間はとうに過ぎているが、未だに待ち人の来る気配はない。自身の影で出来た日時計が無音で進んでいくばかりだった。

人を急に呼び出しておいてなんの用だろうか。それすら聞かされていない。大方新しい武器のセールスのはずだが、もしそうでないならさっさと帰りたいところだった。

最近どうも政府の動きがおかしい。今後の対策を練るため、今は少しでも多くの仲間と資金を集めたいのだ。こんな風に一人虚しく時間を浪費している場合ではない。

前回渡された通信機を睨み付けるも、未だに連絡一つない。なんならこちらから文句を伝えたいところなのだが、すっかり使い方を忘れてしまった。どうも武器以外のハイテク機器は勝手がわからないのだ。便利なようで不便な世の中だと思う。

それでも桂が大人しく待っているのは、待ち人が政府と繋がる武器商人だからだった。最新兵器の開発と販売、それが旧友である坂本の生業だ。
根っからの商売人である坂本は、政府と懇意であるにも関わらず、敵対組織の桂にも武器を売ってくれる。しかも友人価格で半額だ。これを逃す手はない。

坂本の武器のおかげで、桂たちは未だに政府に潰されずに生き残っているのだ。
弱小すぎてろくに相手にされていないのが実情とも言えるが、そんなことはどうでもいい。本懐を遂げるべく生き延びること、それが第一だ。

もちろん、それだけでは世の中を変えられないこともわかっている。人と金、そして武器。今のままではとても足りない。

溜め息をつきたい気持ちで空を仰ぎ見ると、一機の見慣れた小型飛行機が横切っていくところだった。やっと来たかと、安堵の色に染まった息を洩らす。

それとほぼ同時。

飛行機の腹の部分が開き、桂の頭上を目掛け何かが降ってきた。
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