話(連載)
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業火が好きだ。
何かが焼けていく時の匂いが好きだ。
燃える血肉の匂いが、この世の何よりも好きだ。
世界中にこの匂いが満ちればいい。否、近いうちに満たしてみせる。
街も人間もあらゆる機械も、全て。この世の何もかもを燃やし尽くしてやる。
俺たちを見下して追い払ったこと、せいぜい炎に呑まれて後悔すればいいのだ。
そう。いま眼前で悶え果てて逝く人間たちと同じように。
「ねぇ、阿伏兎。楽しいね」
「俺ァ可哀想で見てらんねーよ」
「嘘つき。顔がニヤけてるよ?」
「そらァ気のせいだ、このすっとこどっこい」
顔をしかめてそう吐き捨てながらも、阿伏兎は炎を操る手を休めない。
もちろん俺が命令してるからなんだけど、やっぱりその顔はどう見たって楽しそうだ。
なんだかんだ言ったって、それが俺たちの本能なんだ。逃れようがない。
逃れたいだなんて、一度として思ったことはないけれど。
さて、俺ももっと楽しまなくちゃ。
くるりと空中で回る。
大きく燃える炎になって、逃げ惑う人間たちを追いかけた。