話(連載)
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人間は嫌い。
強欲で浅はかで、他人の気持ちなんて少しもわかろうとしないから。
私たちの力が必要なくなれば見向きもしなくなって、かと思えば高く売れるからと捕まえにきて。
なんという思い上がり。なんであんな野蛮で無力な種族が世界を牛耳っているのだろう。
本当は、全員この世の果てまでぶっ飛ばしてやりたかった。
でもそれをしなかったのは、死んだ父の言葉がいつだって聞こえてくるからだ。
「人を、憎まないでほしい」
そう言って大きな風の一部となった父は、今も傍にいるような気がする。
父を悲しませるようなことはしたくない。だから私はこれほどの憤りを感じながらも彼らを殺しはしないのだ。
胸のうちで、憎悪は育つことを止めないけれど。