話(連載)

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プラカードに次々と浮かぶ矢印に従い飛んでいた神楽の眼下には、町外れにある古い長屋があった。手に持つプラカードに真下を示す矢印が浮かんだので、そのまま急降下する。

降りていくとすぐに、目の前の家から一人の男が小走りで出てきた。

「おお!おかえりエリザベス、と…あれ…どなたですか?」

「銀ちゃんの代わりに助けに来てやったアル」

神楽が得意気に言うと、出迎えに来た桂は礼の言葉を述べて深く頭を下げた。再び正面を向いた顔には眉が寄って皺が出来ている。

「そうか…あいつは来てくれなかったか。いや、いいんだエリザベス。また別の方法を考えよう」

ごめんなさい、と書かれたプラカードを桂が撫でると、エリザベスは元の白い生き物の姿に戻って頷いた。

「ちょっとー!神楽ちゃーん!」

すごいスピードで新八が降りて来たため、辺りには小さいながら突風が巻き起こった。慣れている神楽はうまく風をいなすが、エリザベスはもろに吹き飛ばされそうになり間一髪桂に掴まえられる。その桂の長い髪は一瞬のうちにほつれ絡み合っていた。

「危ないから早く帰ろう!」

「嫌アル!」

神楽は一歩も引く様子を見せない。無理に連れ帰ることも出来ず、新八は無力な手で頬をかいた。

「困ったなあ…。あ、初めまして。僕新八って言います、風の精です」

「俺は桂小太郎、反政府組織のリーダーやってます」

反政府組織、という言葉に新八の纏う風が揺らぎ、神楽の体からは僅かに火の粉が舞散る。桂は複雑に絡み合った髪をなんとか直そうと苦心していた。エリザベスがプラカードを持っていない方の手でそれを手伝う。

「あの、銀さんは危ないから関わらない方がいいって言ってて…」

「ところで何で困ってるアルか?」

退こうとする新八と突き進もうとする神楽。余計に髪の絡んだ桂は二人を交互に見た。

「二人のリーダーは奴なのだろう?ならば勝手に関わらせるわけにはいかん」

「ですよね…!よし、神楽ちゃん帰ろう」

「違うアル!リーダーは私ネ!」

「えェェェ!?ちょっと!神楽ちゃん!あの、桂さん、違いますからね!」

新八が慌てて制止と訂正に入ったが、桂の輝く目は完全に半透明の新八の姿を認めていない。

「そうか、あなたがリーダーだったのか!それは失礼した。ならば是非手を貸していただきたい」

「もちろんアル!」

「ちょっとォォォ!」

間にいる新八の叫びは二人に届かず…

「あっちか」

しかし走って向かってくる銀時にはたしかな道標として伝わっていた。
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