話(高校生連載)

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すぐそこに




きっと俺が間違っているんだろう。
なのに何故、こんなに幸せなんだろうか。



「テメェは本当に馬鹿だ。救いようがねェ」

「かもなー」

破いたシーツできつく縛られた傷口は脈打って、止まらない血が俺の太ももと床を染めていく。
高杉は鬼のような形相で俺の脚の付け根を押さえている。

「痛ェよ高杉ー」

「黙れ」

「…収まってきた」

油性ペンで自分の腕に何やら時間を書き付けていた山崎が言った。
こいつは最初こそ呆然としていたが、すぐに人格でも入れ替わったかのようにテキパキと坂田と高杉に指示を出したのだ。将来の夢は医者だとか冗談めかして言っていたことがあったが、どうやら本気だったらしい。ちょっと見直した。

「なんでこんなことしたわけ?」

ビニル袋に入れた手で血まみれの床を水拭きしていた坂田が俺を睨む。

「さぁ、なんでだったか」

口角をあげてすっとぼけてみせると、坂田は溜息をついて真っ赤になったタオルに視線を落とした。

「すげー心配してんですけど」

「…悪いな」

血はほとんど止まったようだった。今回こそは成功するかと思っていたが、俺もこいつらもなかなかしぶといらしい。少し残念だが面白いものも見れたし良しとしようか。

けれど、こいつらはこんな迷惑を被っても俺の傍にいてくれるんだろうか?

それが無理なら、どうせいつか離れていくのなら、頼むから、今ここで殺して欲しいと思う。

高杉の汗が太ももに落ちた。

「離しても、大丈夫だぞ」

心とは裏腹にそう言ってみせる。

「テメェの言うことなんざ信用できるか。黙ってろ」

こちらを見ずにそう言った高杉の汗が、また落ちた。

「なぁ…」

「んだよ」

高杉がちらりと俺の顔を見る。山崎と坂田も黙って傍で聞いている。

「俺、幸せだ」

このまま死ねたら多分最高に。





いずれ使う予定だった話。今は少し軌道がずれてお蔵入りになったので、ここで。
起こりえるけれど起こらない事態です。


コメントありがとうございました!

 

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