話(高校生連載)

□みっつのもも
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「桃でいいか?」

俺と土方さんと高杉さんの首が一斉に縦に振られる。質問主は満足そうにニヤリと笑い、ソファから腰を浮かせたが一旦また座り直した。

「なぁ土方。桃、3つしかねェんだけど…4人でどう分ける?」

わざわざ何をするのかと思えば、小学生に出すようなとんち問題の出題だった。馬鹿にすんなって殴られたいのだろうか。さすが変態。高杉さんも呆れたように眉根を寄せている。

「…じゃぁ…俺いらねーからお前らで食えよ」

「えぇっ!?」

思いがけぬ答えに頓狂な声をあげてしまい、土方さんに横目で睨まれた。わざと言っているのだろうか。しかし顔は至って真面目そのもので、というか少し悲しそうですらあって、うっかり「俺の桃あげますよ」とか間抜けたことを言ってしまいそうになった。

出題者は天パ頭を掻いて、なんとも微妙な笑顔を浮かべている。もしかしたら、この人には土方さんの答えがわかっていたのかもしれない。直感的にそう思う。

「我慢すんなって。そういう時は、みんなが同じ量食べられるように切り分けりゃいいんだよ」

言い終わるとまさかのドヤ顔になった。ちょっとイラっとしたから、さっき飛んできた消しゴムを素早く拾って投げる。隣の土方さんを見ると、目を丸くして何か考えていた。きっと本当にそんな発想がなかったのだろう。

足りなければ自分が我慢する。そうやってずっと生きてきたのかもしれない。そう思うと少し切なくなった。俺はまだ土方さんのことをよく知らないけれど、辛い思いをしてきたことは言葉や行動の端々からわかる。一緒に暮らす友人は尚更わかっているのだろう。

どうか、土方さんがもう苦しまなくて済みますように。その為なら俺の桃くらいいくらでも譲る。出来ることならテストの点だって分けてあげたい。もしやこれって母性愛…?

「さて、切ってくるかな」

旦那は満足したのか、今度こそ立ち上がってキッチンへと向かった。

「つーか走ってもう一個買ってこいよ」

その背に向け、ソファにふんぞり返った高杉さんが威圧的に言い放った。なんとも俺様セレブな答えに、庶民の俺の口は間抜けに開く。…やっぱ、この人魔王かも。

土方さんは俺がちゃんと見守ろう。そう決意を新たにした。







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