話(高校生連載)

□坂田銀時の誤算
1ページ/2ページ


誤算だった。とんでもない誤算だった。廊下に貼り出されたクラス編成表を見て絶句した。坂田銀時、3年F組。

三年次のクラスが成績順で決まるというのは知っていた。成績上位かつ難関大志望のAクラスから始まり、最後は卒業ギリギリレベルのG組。俺は土方と一緒にG組に入るつもりだった。だから抜かりなくテストでは手を抜いてきたし、出席日数が危うくなるまでサボり倒したのだ。それなのに、無情にも俺はF組なんぞというブービークラスにぶち込まれている。おそらくは一年次の成績も加味されているからなのだろう。なんてこった、呪ってやりたい。中途半端に出来の良かったあの頃の俺を。

「…離れたな」

隣でクラス表を見ていた土方が呟いた。その横顔は物凄く残念そうだ。決して色眼鏡なんかじゃない。その証拠に、同じように土方の横顔を見た山崎が不安そうに俺に目配せを寄越した。

「担任は、松平か」

高杉が言う。松平というのは去年二年次の学年主任だった厳ついおっさんだ。何度か指導室で怒鳴られたことがある。見た目はほとんどヤクザで、中身もほとんどヤクザだ。それでも人間としては筋が通っているから、粗暴な振舞いに反して生徒からの信頼は厚かった。去年は担任を持っていなかったが、今年はG組という問題児集結クラスを任せられたらしい。たしかにあのおっさんでなければ務まらないだろうという気もする。

「色々と煩そうだよな」

「悪い人じゃないんですけどねー」

そう言う山崎は予想通り高杉と同じA組に入っていた。高杉はもともと首席だし、山崎は成績上位で志望が医大だ。俺としてはこいつらと離れて土方と二人きりのG組ライフを過ごすつもりだった。

それなのに…

無情にも始業のチャイムが鳴り、山崎と高杉が廊下を歩いて行く。その反対方向へ二人並んで向かい、G組へ入る土方を俺は見送った。



 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ