話(高校生連載)

□坂田銀時の誤算
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土方が席に着いた。隣に座ってんのは無害そうな女子だからいいとして、前後の野郎がいかにも出来損ないの不良感を漂わせている。他にもろくな奴はいなさそうだ。これじゃ土方の学校生活に支障があるんじゃなかろうか。今からでも頼み込んで俺もこっちに入れてもらえないだろうか。俺さえ傍にいればどんな不良だろうが落ちこぼれだろうが、土方に指一本触れさせない。

「なァにやってんだァ坂田ァ、テメェのクラスはこっちじゃねェってェのー」

「おう松平、俺G組入るわ!よろし、痛っ!」

「松平先生、だろォがァ。寝言は寝て言えっつゥんだよォ」

出席簿の角で思いきり殴られ、痛みによろける。手加減なしなあたりやっぱりこいつはヤクザだ。騒ぎに気付いたのかこっちを見た土方と目があった。あぁほらもう絶対俺に傍にいてほしいって目だよあれは。

「頼む!全力で落ちこぼれてみせっから!」

「馬鹿言ってねェでさっさとF組入れィ」

「イテテテテ!禿げる!禿げるっつーの!」

髪をむんずと掴まれ、すぐ隣のF組に強制的にぶちこまれそうになった。教室に片足一歩踏み込んだところでなんとか留まり、松平の顔を見上げる。

「土方のこと頼む。松平、…先生」

「お前に言われんでもォ、受け持った生徒の面倒はバッチシ見るってェのォ」

そう言って松平は俺を蹴って教室にぶち込み、ドアを閉めた。まさか土方には暴力振るわねぇだろうな、あのおっさん。そうなったら高杉も連れて殴り込みだ。

「あ、さ、坂田くん…?席に座ってもらえるかな…?」

「おう長谷川サン、一年よろしく」

教壇に立つ新しい担任に手を振り、ちょうどすぐそこにあった空席に腰掛けた。クラス中が俺を胡散臭げに見ているが、そんなことはどうでもいい。

土方、寂しくて泣いてねぇかな…。そう思うと俺が泣きそうだった。クラスは違ってしまったが、やっぱり俺の手で守ってやりたい。つーか早く会いたい。

机の隅には、誰がやったのかはわからないが『LOVE』と彫られていた。気持ちはわかる。俺だってこんな風に引き離される日々が続いたら『土方』とか彫り始めてしまうかもしれない。

なんとか、ならねぇかな。『LOVE』を指先でなぞりながら、全てを解決してくれるような妙案を探す。







こんな風にして、俺の高校生活最後の一年は始まったのだった。








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