話(高校生連載)

□secretion
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「顔色悪いけど、大丈夫か?」

「…何の問題もねーよ」

「でもお前、」

「シャワー浴びてくる」

そう言って青白い顔を俺から逸らし、土方はふらふらとリビングを出て行く。いい加減ぶっ倒れるんじゃないかってくらい不安定だ。いっそ倒れてしまえば楽なんだろうと思うが、慣れているせいかなかなかしぶとい。
本人も辛いだろうが、俺だって辛かった。こうして一緒にいられるのならいいが、学校に行っている時は心配でしょうがない。隣の教室で土方が倒れていたらどうしようかと思うと、全く授業に集中出来ないのだ。たまに教室を抜け出して覗きに行ってしまう。おかげで早々にクラス一の問題児扱いだ。そんなもんは慣れてるから別にいいんだけど。

久しぶりに、土方の不眠が本格化しているようだった。推測でしかないのは、本人が頑として認めないからだ。何度聞いても「寝てる」の一点張りで、それ以上追及しようとすると逃げられてしまう。それでも約一年同居し、つぶさに様子を見守ってきた俺にはわかる。一日目で気付いた自分は土方マスターだと思った。こんだけ愛してるんだからもっと心を開いて甘えてくれねぇかなとも思った。

でも土方は頑なに俺を拒む。強がって、苦しみを隠す。気を遣っているからだとわかってはいるけれど、少し寂しい。

迷惑だなんて思わないし、見返りなんて求めないのにな。

俺はただ、土方に優しくしたい。持てる力全部使って、幸せにしてやりたいだけだ。



…望まれなくても?



嫌な自問が、頭を過った。

それを打ち消すように、あるいは同意を示すかのように、リビングの外から物音が聞こえた。



 
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