話(高校生連載)
□何と引き換えにすればこの祈りは
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曇天の下にいたのは、旦那と高杉さんだけだった。
コンクリートに並んで寝転ぶ二人の顔は腫れている。唇の端には揃って乾いた血がこびりついていた。何をしていたのかは自明だ。
あほだと思いつつも、旦那の表情が久しぶりに明るくなっていたので少し安心した。
「…で、引き分けですか?」
「俺の方が一発多く入れた」
「ざけんな、俺の方が多かった」
魔王と白夜叉はくだらない言い争いを始める。どちらが強いのか前から気になっていたのだが、きっと互角だったのだろう。観戦出来なかったのが残念だ。
「引き分けなんですね」
放っておけばまた殴りあいに発展しかねないので、きっぱりとした口調で二人の間に割って入った。
それでもまた何か言い出しそうだったので、咄嗟に話題を変える。
「ところで、土方さんは何処ですか?」
「教室にいなかったのか?」
「はい。旦那が連れて来てるもんだとばかり…」
訝しげな顔をする旦那の横で、高杉さんが携帯を取り出した。
全員黙して暫く待つ。電話は、繋がらなかった。舌を打ち、高杉さんが立ち上がる。旦那もそれに続いた。
三人で顔を見合わせる。不安と希望的観測が混ざりあった空気。
「三階見ます」
「俺は二階行く」
「…見終わった奴から、外に」
絡みつく湿気を振りきるように足早に、俺達はあの人の元へと向かった。
終
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