話(高校生連載)
□瓦礫
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「俺が行きます!」
旦那を追おうとした高杉さんの背に向けて言う。
いま土方さんの傍にはこの人がいなくちゃいけないし、いま旦那の傍には俺がいた方がいい。
言葉にしなくても伝わったのだろう。振り向いた高杉さんは一瞬の間のあと頷いて、こちらに歩いてきた。
震えの止まらない土方さんの肩に高杉さんの手が置かれる。それを確認して、俺は細い腕から手を離した。
リビングを出る手前のところで、目が合う。
「ごめんな、退くん」
「…連れ帰りますんで、」
「うん、すぐ帰るよ」
二人に紹介した方がいいかとも思ったけど、そのまま外に出た。きっと言わなくたってわかるだろう。髪色と年齢の違いはあれど、瓜二つだ。
俺が会うのは何年ぶりだろうか。旦那の父親である金時さんはあの時と少しも変わってないように見えた。