MaiN L

□拍手御礼文
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 小さいころは兄さん、兄さんと俺の後ろをついて回って、友人と遊ぼうとすると拗ねて、その後行かないで、と泣いて縋ってきた弟は今ではすっかり兄離れしてしまった。

それどころか反抗期、思春期を迎えて常にイラついているような、ピリピリとした雰囲気を醸し出していて、まともに会話をすることさえなくなった。

中学生というのはこんなものなのだろうか。自分もとっくに体験しているというのに、棚に上げて首を傾げる。

兎にも角にも、弟を溺愛している(愛している)身としては随分と寂しい時期が来た。

中2になった弟とここ一週間顔を合わせていない。
大学に入り新しい環境となって、バタバタと忙しい生活をしていたので家に帰る時間が遅くなることが度々あったのも原因の一つではあるが、イタチにはもう一つ大きな原因がある、と思っている。









それは、サスケがほとんど家にいないということだ。

何かとクラスの友人の家に泊まり、家に帰ってきたとしても、直に自室に籠ってしまう。


部屋に籠っているときに、部屋に顔を出すと気まずそうな、イタチにどう接していいのか分からないような無愛想な対応を取られるようになってしまった。


挙句の果てに、ほんの数週間前にはフラフラと友人宅を泊まり歩くサスケに業を煮やした父がサスケを叱ったが、逆ギレという、今までのサスケには考えられないような行動を起こした。

うちは家初の修羅場が起こったのは記憶に新しい。
どうにか俺が父さんとサスケの間に入って場を収めたのだが、サスケの振る舞いに戸惑う自分がいる。

母さんは流石というか・・・呑気に〈サスケも反抗期に入ったのね、物だけは壊さないように見張っててね、イタチ〉だけ言って洗い物をしていた。



俺は反抗期といっても、少し一人の時間が欲しいと思うくらいしかなかったので、サスケの反抗期の激しさに圧倒されてしまう。

可愛い弟には変わりないのだが、俺にとってサスケは兄さん、と満面の笑みで腰に抱きついてくるイメージが染みついているので、やはり戸惑いが大きい。






・・・そういえば、もう肩ぐらいまでサスケの身長は伸びていたな・・・。


腰に手を回して猫のように擦り寄ってくる弟から、最近の反抗期真っ盛りの弟の姿を想像し、なんとも切ない事実に気付く。

こうやって、成長していくのか。


感慨深い半面、悲しいというか寂しいというか。


これを乗り越えてサスケは大きくなるのだ。
兄離れはむしろ喜ばなければならないのかもしれない。



イタチはサスケの変化を肯定的に受け入れようと、思考を切り替える。

リビングのソファに腰を下ろしてテレビに意識を集中させると、ガチャ、とリビングのドアの開閉音がし、自然と目がそちらに向く。


「サスケ・・・」

「・・イタチか」



久しぶりに会った弟に驚き名を呼ぶと、無表情のままで可愛い弟は俺を呼び捨てにして名を呼んだ。



その事実に多少ショックを覚えるが、押隠して久しぶりに弟と会話をしようと話しかける。

「久しぶりだな」

「ん」

サスケは目線を反らして短い返事をする。その表情に笑顔はない。

サスケは身をひるがえすとリビングを出て、二階の自室に行ってしまった。

もっと話したかったのに、そう思いながらイタチは嘆息した。




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