MaiN S

□二人
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今、こうして共に居られる時間がどれだけ貴重かわかっている。

越えられない線に苛まれながら、それでも同じ時間を共有出来たら。


それほど幸せなことはないんだ。

















「何だ。まだ起きていたのか?」

「ん、何か眠れなくて」




日付を跨いで土曜日になった深夜一時。リビングに座り込んで深夜番組をボーっと眺めていると、突然背後から兄に声をかけられた。

明日…とは言ってももう今日なのだが、勿論学校は休みで早起きする必要はない。まあ、平日でもこの時間帯はサスケの活動時間、この時間にサスケが起きていることに関しては珍しい事ではない。しかし深夜はどちらかと言えば部屋に籠っているのでこの時間にリビングにいることは中々ない。


一階にわざわざ降りてリビングにいるのはただ単にその時の気分のせい。


しかし、イタチはそうは受け取らなかった。


サスケが眠れない、という発言をしたせいもある。


どうしたんだ、と隣に座って弟の悩み相談でも受け付けようとする兄の体勢にサスケは気付きもせずに兄のスペース分を確保するために少しソファの端に体を寄せた。


深夜番組特有の緩いバラエティ番組が流れて、それを視界に入れながら、サスケの意識は隣に向かった。……イタチが隣に居るというのは、案外緊張する。


何故かはとっくに解り切っていること。それにイタチは気付いているだろうし、イタチも自分を意識してくれているから隣にいてくれるのかもしれない。



静かな兄弟の時間とはかけ離れた妙な緊張感に、手のひらに汗が滲み始めるのに時間はかからなかった。



「明日の予定はないのか?」

「ない。寝ることくらいか」

「もったいないな。せっかくの休日だろう」

「昼は眠いんだ」

「遅くまで起きているからだ。…眠れないなら添い寝してやるか?」

「はあ?」


ふふっと隣で聴こえた含み笑いと共に放たれた言葉に目を見開いて驚くのは普通だろう。


冗談だと解ってる。

解っているのに過剰反応してしまうのは…



少し本気に受け取ってしまうから。


「何驚いてるんだ。兄さんと一緒に寝るのが嫌なのか?」

「あ、んた。馬鹿だろ」



だから、そういうこと言うなよ。動揺しきって切り返したが隠し切れている自身が全くない。彷徨う視界の端でイタチの口角が上がっているのは直に分かった。


からかわれている、そう瞬時に捉えたら今度は胸がムカムカしてきた。

それを顔に出さないように、イタチから視線を外すと今度はその子供っぽさで笑われた。



…どうしろっていうんだ。




「ほら、いい加減寝たらどうだ」


ポンと肩を叩かれて二階の自室に行くように促され、ついでに差し出された手に困惑する。

「何だよ」

「部屋まで連れてくよ、ほら」


くいっと手首を掴まれて半ば強引に立たされて引きづられるようにして部屋に連れて行かれた。




その途中でテレビと電気を消す兄の姿を見ると、本当に連れてく気なのかと諦め、振りほどこうと思えば振りほどけるのにそれができない自分の右手を恨めしく思う。





イタチと接触しているその部分が熱い。





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