MaiN S
□熱 [前]
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だるい。
何故だろう。季節は初夏を迎えて風は幾分か涼しいが日差しがきつくとても寒いなんて感じることはないはずなのに。
サスケは静かに重たい息を吐き出してから何かをこらえるように瞼を閉じる。
この感じは嫌な予感がする。
任務を終えて里に着いた途端にこれだ。
そもそも朝方に久しぶりに七班で揃った時から妙に体が重いとは感じていたのだが、任務中は集中していたおかげで倦怠感など全く感じずにいた。
報告書を提出しに行ったカカシの後ろ姿を見送る間もなく、早めに帰ろうと踵を返したサスケに同じ班の二人が食事に行こうだの、なんだアイツだの言葉を投げかけられた気がするが、あいにく今日はそれに反応するほどの元気がなかった。
家に帰って玄関先に腰を下ろしたのはいいものの、それから先に何か行動をしようと思う意欲がわかない。
…こんな姿を父親に見られたら、情けない、イタチを見習ったらどうだ、自己管理もできんのか、などの辛口な言葉を吹っかけられそうだ。
それだけはサスケの高い矜持が許さなかった。
「あー、っくそ」
立て、とりあえず部屋に。
気怠い足に無理やり力を入れて家に上がりこむ、と同時に眩暈でも起こしたのかクラクラと揺れる視界に舌打ちをする。
手近にあった柱に寄りかかってその立ちくらみと気のせいだと思いたい頭痛をやり過ごそうと目を閉じる。
「…サスケ?なんだ帰ってきたなら一言挨拶くらい…サスケ?」
閉じた視界に不意にかけられた声。
それと同時にぐっと肩をつかまれて無理に正面を向かされる。
はっとしたのはほんの一瞬。
「イタチ?」
「どうしたんだ、サスケ。顔が赤い…」
肩に感じる強くもあたたかい掌、目の前には兄、イタチの姿。
…今日は任務じゃなかったのか?
誰も家に居ないだろうとふんで帰った家には何故か兄の姿。
何でここにいるんだと、聞けるような状況ではないと判断するしかないほど、イタチの表情が険しくなる。
額にいきなり押し当てられた手。
「…えっと……」
「熱がある」
「あー…」
やっぱりか、そうこぼそうとした口は噤まざるを得なくなった。
視界に入ったイタチの表情に思わず呑まれてしまったからだ。
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