MaiN S

□Sasuke's Birthday 2012
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毎年当たり前のように兄弟の誕生日はお互いに何かを渡しあっていた。

幼いころはおもちゃを、アカデミーに入学したころには巻物を、下忍になった時にはある武器商人からサスケ用にカスタマイズされた刀を打ってもらって、それをプレゼントした。

去年は中忍になったこともあって、それのお祝いも兼ね、食事に誘い。

…ここ最近上忍に昇格した弟に、贈る物……。

毎年昇格してついに上忍にまで上り詰めた弟・サスケは修行や散歩以外にそれといって興味がない。

強さを求め続け、ひたすら修行に明け暮れる彼を見続けたため、サスケが喜びそうなものは何なのか?それを考えて出てくるものは大抵物騒なものしか思い浮かばない。


一昨年に下忍だったサスケに刀を渡したとき、それはそれは喜んでいた。それは、良いのだ。だが、少々…微笑ましい光景とは言い難い。

弟に渡すものではないだろう、と周囲から言われ、なんとなくそんな気がしていたイタチは次の年にはサスケを外食に連れて行った。

結構値が張ったが、育ち盛りの弟が次から次へと料理を口に放り込んでいくのを見るのはむしろ嬉しかった。

武器を渡したときほど喜んではいなかったが…。


7月22日。

うちはイタチは早々に任務を切り上げ里に戻ることにした。弟の誕生日が明日に迫っているのに何も用意していない。このままではだめだ。

この間シスイにサスケの誕生日に何を渡せばいいかを相談したら、彼は「そんなに悩むならいっそ渡さなきゃいいんじゃないのか?サスケももう14になるんだろ?プレゼントで騒ぐほどガキでもないだろう」、と鼻を鳴らして真面に取り合ってくれない。


一理ある。と思う。

しかし、これはもう毎年の恒例行事。

それに、俺自身が渡したいと思うのだから。

サスケが問題なんじゃない。





報告をし終わったイタチは暗部の本部で軽くシャワーを浴び、普段着に着替え里内を歩く。昼下がりの里は人が行き交い賑やかなものだ。


正面からは数人の子供たちが鬼ごっこをしているのかイタチの脇を駆けていき、出店のおばさんには差し入れにと、スイカを渡された。誰かと思ったら、親戚のおばさんだ。

帰ってから冷やそうと、片手で抱え思考に明け暮れる。


最近のサスケはあまり笑わなくなった、と思う。

忙しいのだろうか、妙に荒んでいる気がするのだ。

すれ違っても最低限の言葉しか交わさないし、お互いが忙しいのでなかなか話す機会もないまま、何がほしいのかも聞き出せずに今日まで来てしまっている。


何か、サスケの好きなものを知る者はいないだろうか。

兄だというのに、案外弟を分かっていなかったことが何だか悔しい。



「イタチ?」

考え事をしすぎて、一瞬喧騒の中に混じる自身の名を呼ぶ声を聞き逃しそうになった。

はっとしたイタチは顔を上げる。


「カカシさん…」




目の前、ほんの数十メートルほど先に、覆面に片目を額宛で覆っているいかにも、な忍がいた。

こんなに近くにいたのに、気づかなかったとは。

内心反省しながら、嘗ての暗部の先輩に一礼した。





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