MaiN S

□二人
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「っ、本気か?」

「冗談だと思ったのか?ほら、寝るぞ」

「ウソだろ…」



さも当たり前のようにベッドに入ったイタチに眩暈を覚える。

対するイタチはサスケが唖然としているのを不思議に思ったのか首を傾げている。


中に入るように促されてフラフラとベッドの端に座れば手を引かれて、イタチの近くまで引き寄せられる。




シングルベッドに二人も男が寝れば流石に少し窮屈だ。

いや、かなり。



おまけに二人の間に隙間なんてものは皆無で、息遣いも、体温も、身じろぎ一つでさえ感じ取れてしまう。


嬉しい状況なのだが、正直逃げ出したいほど恥ずかしいとも思うのだ。

どうすればいいか解らずにパニックになりかけているサスケのことなど意にも介さずに、イタチはもっと近くに寄れと、サスケを更に引き寄せる。


「落ちてしまうぞ、ほら」

近くなれば、それはそれで。


イタチを想い、慕っている。悪い事ではないのに、何だか悪い事のように思ってしまう自分の頭をなぐってやりたい。


普通の兄弟関係を保っている二人だ。年齢のせいもあってこんなことになるのは数年前に卒業したはずなのに、再び訪れた状況と昔とは明らかに異なる感情を相手に向けていることに罪悪感すら感じてしまった。


何故イタチがこんなことをしだしたのか、こんな事態になっているのかすら解らない。


ただ一つ、解っているのは




「寝れるわけねーだろ」

「そうか?横向きが嫌なら、仰向けで寝ればいい」


空間的に互いが横向きになっているのだが、イタチは壁側によって更に空間を作り、サスケに仰向けになるように促した。



そんなことをされても困る。



なんか色々と違う!と声を大にして言いたいのだが、そんなことをしたら両親が起きてしまう。

ついでに今の状況を見られて何をしているんだ、と聞かれても応えられる自信はない。



どうすればいいんだ、と顔に集まってくる熱に抗うことも出来ずに言われるがままに横になる。



暗闇の中で、イタチに今の顔を見られていないことがせめてもの救いだ。



すっと伸びてきた手がサスケの髪を梳き、首元を擽る。

「っ…」

「目を閉じていればそのうち眠れるさ……サスケ」



指通りのいい、硬質な髪を確かめながらサスケの身体を自分の傍に引き寄せてやる。

何だか物言いたげな弟の気配を感じながらも、敢えてそれを無視してリラックスできるように肩を撫でれば徐々にサスケのこわばりが解けていくのを察知した。



落ち着き始めた弟が静かな寝息を立て始めるのを息をひそめて待ちながら再び髪に指を絡めると、胸元で身じろぎする存在に胸が熱くなった。



「兄さ…」

「……」


まどろみの中に入ったサスケが何かを言いかける前に、意識が途絶えてしまったのか、その後に続く安らかな息遣いに深い吐息が漏れる。








気付いている。自分の気持ちも、サスケの自分への想いも。


しかし、ほんの少しの躊躇いがこれ以上進ませずにいた。



弟のため、そう思って封印した感情はサスケが自分に向ける感情に気付いた瞬間から綻び始めていた。


それが、今回の行動に結びついてしまったのかもしれない。


サスケに応えるつもりはない、と心に決めていながら、兄として接するのだと常に自身に言い聞かせておきながら、サスケを振り回すようなことをしてしまったことに後悔の念が浮かぶ。


しかし、今のこの温もりは何物にも換え難い。




胸元に当る穏やかな寝息を感じながらイタチはその温もりに手を伸ばす。



今だけは、この瞬間だけは、俺のものでいてほしい。





自分勝手な欲望と良心に板挟みになりながら一夜を過ごすことになるのは目に見えているのに、眠りについた想い人から離れることが出来ずにいた。












end.
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