比翼連理
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「……これ、」
嵐がポケットから出した手を開く。
のろのろと視線をやると、それは病室の電灯に反射してキラリと光った。
その光に、ぼやけていた焦点がゆっくりと結ばれる。
「………ゆび、わ…?」
シルバーのリングの真ん中に、キラキラした石が一つ。
シンプルながら、その石は彼の意思を物語るかのように輝きを主張していた。
本物の宝石なんてそう見たことはないけれど、それはその辺で売っている安物には到底見えない。
「俺さ、まだ17やから結婚はできんけど…予約、させといてほしいんや」
しばらく呆けたように指輪を見つめていた私は、その声にはっとして嵐を見上げた。
緊張しているのか、頬が若干強張っているように感じる。
「俺の未来、全部花にやる。せやから、花の未来も俺にくれへん?」
未来、なんてそんなもの、私にはもう。
嵐の人生をかけるほどの価値なんて、きっとありもしないのに。
それでも、私を選んでくれるの?
「花、俺と結婚して?」
嵐が柔らかく微笑んだ気がした。
あぁ、ダメだ。
嵐の顔が見たいのに、涙で何も見えないよ。
手を伸ばして身を乗り出そうとすれば、その手をしっかり握り、優しく背中を支えて起こしてくれる。
「……返事は?」
慈しむように肩をさすりながら催促されて、必死で頷いた。
望んでくれるのならなんだってあげるよ。
例えそれがあなたを縛ることになったとしても。
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