Clap

□今日もいい天気
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「あーあ、天気悪ーい」

ホームルームの終わった教室。
他の生徒がぞろぞろと帰っていく中、ため息と共に心の声が漏れた。

窓の外は今日も雨。
じめじめして気持ち悪いし、気分も上がらない。
学校帰りの公園デートもずいぶんしてないし…

けれど、私の隣でその発言を聞いていた嵐は意外なことを言った。


「雨が悪い天気やなんて誰が決めたん?」


「えー?誰がって言われても…」


そりゃ決まってはないだろうけど…
雨の日に「いい天気ー!」なんて言ってる人がいるだろうか。
どんよりした空にじめじめした空気はきっと誰でも気分よくないと思うんだけど。


「雨が降らな生きていけへんし、そう悪いことばっかりやあらへんで」


「う、まぁ…」


そう言われればそうなんだけど、それは極論ってもんだ。
実際、行動は制限されるし、髪は跳ねるし、いやなこと多いじゃない。


「ちょい来てみぃ」


納得しない私にそう言うと、嵐は私の手を引いて歩き出す。

教室を出る途中、嵐はだいぶ前から後ろの棚の上に置きっぱなしになっていた、たぶん誰かの忘れ物のビニール傘を持ち出していた。

なんで傘…?
荷物は置いたままだし、階段登ってるってことは帰るわけじゃないんだよね…



「…ねぇ、どこに行くの?」


「屋上」


「え、雨なのに?それに確か鍵掛かってるんじゃ…」


「まぁ見とき」


教室横の階段を登りきり、屋上へのドアの前にしゃがんだ嵐は、ポケットから取り出したピンでいとも簡単に解錠してしまった。


な、慣れてる…!
たまに授業サボってどこに行ってるのかと思ってたけど…


呆れる私を尻目に、嵐は涼しい顔でドアを開いた。
もちろんその先は雨の降る屋上。

嵐は当然のように持っていたビニール傘をさした。



「ほら、こっち」


手を差し出され、素直に傘に入れば、濡れないように肩を抱かれて一瞬ドキッとした。


「あー、シューズ濡れちゃうよ…」


「今は小雨になっとるし、ちょっとくらい平気やろ」

そのままゆっくり歩き出し、屋上全体を囲む味気ない金網に近づくと、その向こうには…


「あ…」


「な、綺麗やろ?」


下校時間の昇降口と校門のあいだ。
流れるように帰路につく生徒たちは、色とりどりの傘の花を咲かせていた。


「何事も気の持ちようやで」


そう言って微笑む嵐からはお日さまみたいな匂いがして。


「そ…だね」


いつもより近い距離に鼓動が早くなる。

なるほど、確かに雨も悪くないかもしれない。


君となら、雨の日だっていい天気!


end.

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