Clap

□こっちむいてダーリン
1ページ/1ページ


「今日は俺ん家でのんびりしよう」


そう言われて、たまにはお家デートもいいなぁなんて思って嵐の家にやってきたのに。




「…ねぇ。……ねぇってば」


「ん、なんや」


「つまんないんだけど」


嵐は自分の部屋に着くや否や、私をほったらかしてゲームに没頭し始めた。
家でのんびりしよう、なんて言っといて、自分がゲームしたかっただけじゃないの。


「ねぇ、ちょっとぉ」


「んー」


「…もう帰ろうかな」


「えー?なんで」


そう言いながらも視線はゲームに向いたまま。


「だって嵐、構ってくれないじゃん」


「おー…せやなー」


…会話が成立しない。
なによ、もう!
そっちがそうなら、一方的にでも会話してやる。


「…ねぇ、私のこと好き?」


「んぁ?おー好き好き」


「あー、2回言った。ホントのことは1回しか言わないって、この前テレビで言ってたよ?」


話を聞いてないのをいいことに、いつもなら気にしない言葉もつい挙げ足を取ってみる。
そう、つい、だ。
なのに、嵐の答えはこうだった。



「あー、バレたか」


「え、」


すうっと胃の底が冷えるのを感じた。

バレたかって、何が?
じゃあ、私を好きだと言ったことが、嘘ってこと…?

黙った私に気がついたのか、嵐はようやく顔を上げて私を見た。


「俺、花のこと好きやないで」


視線を交わした嵐の口から出てきたのはとどめの言葉。
うそ、うそ、まさかこんなタイミングで別れ話とかありえない。

なのに、嵐は顔色をなくした私にそっと触れるだけのキスをした。

わけがわからなくて目を瞬かせると、嵐はゆるく微笑んだ。


「俺、花を愛しとるからな」


だから『好き』だと嘘になる。
そう言われて途端に力が抜けた。


「も、ばか…」


びっくりしたのとほっとしたので、もう泣きそうだ。
紛らわしいこと言わないでよ!!と喚きたいところだけど、それでもキス一つで機嫌を治してしまう私は、やはり彼にベタボレなのだ。


END


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ