【long】

□片陰
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国光を欠いて模索する新体制、それは、

「手塚さん、ちょっといい?」
「これどうやったらいいかな?」

何も部活だけに始まったことじゃなかった。

「副会長!確認お願いします」


それはこの生徒会も同じこと。


「遥奈先輩大変ですねぇ」
「なんたって、会長代理だもんなぁ」

ただ手塚なだけで、なぜか去年の生徒会選で副会長に成り上がってしまった私は、

国光の次点という立場、その代わりを勤めるために前より幾らか多忙な状態の中にあった。

報告書類の作成、認証、生徒会会議、二学期の行事案提出――‥

仕事は目白押し…っていっても、ほぼ国光が片付けて行ってくれたんだけど。
それでも残された仕事を完璧にこなさなければならない。


こんな私にも“手塚遥奈”としての意地とプライドがあるのだ。


「遥奈!職員室で学年主任が呼んでたよー」
「はいはーい」

応えたそれにも笑顔を見せて、

頑張らなくちゃ。国光も頑張ってるんだもん。




苦しい顔なんて見せたくないの、誰にも。

それをただ…




国光に知られるわけにはいかないから。




「おはようございまーす」
「おはよう遥奈ちゃん」
「おはようございまs「遅いぞ国晴!」

いつもと変わらない手塚家の風景。

「全く油断しおってからに」
「もう、国一おじいちゃんてば…」


ただそこに国光がいないだけで手塚家の… 私の手塚家での生活は何一つ変わることはなかった。


「さあ、ご飯にしましょうか… あら?遥奈ちゃんあなた、朝ご飯は…?」

と、空のままの私のテーブルを見て彩菜ママが私に問いかける。

私がわざと自分の食事の用意をしなかった事に、今になって気がついたみたいだ。

「あ〜ごめんなさい、今日は生徒会の役員会があるから… 早く行って資料の最終チェックしたいの」
「そう… だったらもっと早く起きて作れば良かったわね」

彩菜ママは少し悲しそうな顔をして、

国光がいなくて寂しいんだろうか… そう思って、

私も、少しだけ胸が痛くなった。


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