【long】

□白日
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確かに私は手塚だけど…

国光とは血が繋がってないんだ




呆気に取られるような事をさらりと言って、遥奈先輩は笑う。

「ごめんねリョーマ、私ってばもう言った気になってたみたい」

少しも悪びれた様子がなくて、何だか面白くなかったんだけど…

「…わけ分かんない。どーいう事か、ちゃんと説明してくれるんでしょ?」
「分かってる」

余裕な口振り、俺は気持ち不機嫌で… 変わらないまま遥奈先輩を見つめた。

「私…」

だけど、










何で手塚なの?

何で手塚部長と同い年なのに、双子じゃないの?

何で…

手塚部長の家に住んでて、










アンタは手塚なの?










そんな顔すんのは、反則。そう思った。

健気すぎる遥奈先輩をみんな… テニス部の先輩達が慕うのは、同情なんかじゃない。

きっと遥奈先輩が誰よりも強く、誰よりも真摯で… 俺達を照らしてくれる、優しい陽の光みたいな人だからなんだ。だから、

だって遥奈先輩は、いつだってそうして笑ってたから…




















「風、気持ちいいね…」

街を見下ろすコンテナの上。
俺は遥奈先輩と二人、黙ったまま高台からの景色を眺めていた。


あの時、


「居候って分かる?私は国光の親戚なんだけど…」
「…うん。ウチに菜々子さんが住んでるのと同じってコトでしょ?」
「そう」

コクリと頷いた俺に、遥奈先輩は笑みを返してくれた。

「でもね、それは表向きなわけ」
「?」

だけどそれにも、やっぱり意味の分からないといった顔をしただろう俺に、意地悪く。

「リョーマはさっき、菜々子さんがって言ったよね?」
「…言ったけど?」
「それと違うの」
「何が?」

やっぱりよく分からない。

そんな、謎掛けみたいな… 答えを遠回しに伝えようとする事が、次第に俺の苛立ちを募らせていった。

「だから何?はっきり言ってよ」

教えてくれるって言ったのに、ウソツキ。俺はガキみたいで。

「あはは、ごめんね」

思いがけずに笑った遥奈先輩を睨みつけた。


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