【long】

□想詩
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「おはよう国光くん」

目覚めればそこに遥奈がいて、どこか不思議な感覚。

「…おはよう」

俺は少なからず遥奈の事を…




気の許せない存在だと認識していたから。




「朝ご飯できてるよ」
「そう、ありがとう」

無下に接する事などできないでいた。
得手不得手等の問題ではなく、曖昧な距離が二人での居心地の悪さを引き立てる。

「……」
「?どうかした?」
「……寝ぐせ、ついてない?」
「ついてないよ」
「え、そう…?」

当たり障りのない会話、やり取りも、

慣れないのは俺も同じ。器用にはできるつもりだけど、

掴みどころのない遥奈の胸の内、その無邪気さが時に扱いに困らせる。




「…遥奈ちゃん、」
「ん?」
「遥奈、って呼んでもいいかな?これからは… 俺達は家族なんだから、その…」

恥ずかしながら、俺はそれに少しの弁明をして、

「だから俺の事は国光って呼んでくれていいよ」
「……」

遥奈は驚いた顔で。それでも、

それに了承するように、すぐに笑って頷いた。

「うん、分かった。じゃあ…




 国光。」




それを耳にした時、どこか… すごく照れ臭いような、変に胸が高鳴ったのを今でもよく覚えている。

「遥奈」と呼び捨てた事も、

出会って幾月かして、初めてその名を口にした時と同じような気恥ずかしい感覚で。


初々しく、でも重い。

二人の距離はまだ遠い。


まだ遠い、けれど…


「国…… あ〜やっぱ無理、なんか照れ臭い…」
「…そうだね」




歩み寄りたいと、願ったのは俺の方。




笑顔が見たかったんだ。

遥奈が心から幸せだと感じる、あの時のような笑顔を。


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