【long】
□金蘭
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「おやおや、キミのせいで今度は大事な友達が泣いてしまいましたよ?」
大和部長の温かい眼差しを受け、おどけた仕草に少しだけ気を許して。 青学を担う存在となることを請け負う覚悟を決めた国光の、その横顔を忘れない。
「マネージャーをやらないか?」
誘ったのは単に、お節介だったのかもしれない。何もなかった、なくなってしまった、空っぽだった私をさりげなく気遣ってくれて。
新たに目指すもの、夢を持つこと。そばにいて、導こうとしてくれた、それは国光なりの私を思った優しさだったのかもしれない。
「…私が?」
「ああ、まだどこの部にも入部を決めていないだろう?俺達と一緒に全国を目指そう」
どことなく照れた感じで、
「それに… 大和部長がマネージャーが欲しいと言い出したんだ」まるで、取ってつけたような言い草をした、あの日の帰り道。
私にできることは限られているだろうけど、だけど、
国光が言うならそれもいいと心を決めた。
「うん、やる。
やりたい」
見兼ねただけでもいい。
「そうか… ありがとう」
国光の優しさに応えたい。少しでもその夢に加担できるのなら、
ただそこにいただけの私に、「一緒に」と手を引いてくれた国光の想いを守りたいと、そう思った。
それは決定的すぎたんだ。だから、私も負けない。
空っぽだった私を、埋める何かがそこにはあった。
そして国光は私に、仲間として共に歩む権利を与えてくれたから。それが嬉しかったから、私も共に行こうと決めた。
「手塚さん、マネージャーやってくれるんだって?」
「うん。よろしくね、大石くん」
「全国を目指してがんばろうな。よろしく頼むよ」
「うん…!」
夢を誓い合った金蘭の友を得て、
どんな未来が待っていようとも、心は共に。
国光のその全てを、私は守るよ。
たとえその翼を失うことになろうとも、
たとえ、…みんなが咎めても。