【long】

□金蘭
4ページ/4ページ


自分の肩を犠牲にしてまでも青学の勝利を選んだ国光を、止める術なんかどこにもない。

止める権利も認めない。

容認する他ない、肯定してあげたい気持ちとは裏腹に、次第に指先から感覚がなくなっていく、意識が朦朧としていくのが分かる。




私、ほんとは…




このままでいいの…?




「遥奈ちゃん、止めた方が…」隣で、緊迫した面持ちで私を見る不二くん。

「遥奈先輩っ、何で止めないんスか!」

不安顔の桃、後輩達。

止めさせようとするみんなは、私に何を求めるのか。心さえも歪んでゆく感覚が、慟哭とともに体中に伝わっていく。

これは間違っているんじゃないか、とか、止めるべきなのではないか、もしかしたら判断を誤っているのかもしれない、大事になる前に…と、迷いや葛藤で心が乱されていく。

私が一言声を上げれば、この試合が終わるとでもいうの?そんなわけないじゃない、 これは国光の意志だ。誰かの言葉で信念を曲げるほど、生半可な気持ちじゃない。

誰よりも部を思う気持ちが、今私達の見ている目の前の姿、 一人で全うすることを決めた覚悟を、誰にも邪魔させない。




もう何が正しいのかなんてわからないよ




私だってみんなと同じだよ、

先を安ずるなら止めさせたい、そう思うのは当たり前のことで。それでも…

それでも止めないのは、私が誰よりも国光の想いを知っているから。

先は見えない、不確かで。

それでも、抗えないのは、私達が国光の想いと共にここまでやって来たから。

誰よりも青学に懸ける彼の想いを感じているから。




















だから認めた、

大石くんと、私。




「がんばれ」
「頑張れ国光!」




約束を果たそう…




















精一杯のエールで、送り出す茨の道は彼に何をもたらすの?

不確かな未来を歩み出した先に、




思いもよらない空白が待っているとも知らずに。


前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ