【long】
□霹靂
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あれから、もうどれくらいの時が過ぎただろうか。激戦はタイブレークへと突入し、なお激しさを増していった。
「相当辛いよね、手塚…」
国光が圧倒的不利かと思われた延長戦の最中で、
「でも…国光は負けないよ」
「うんうん!遥奈の言う通り!」
己の力の全てを賭けた国光の精神は、極限状態にあるにも関わらずその心を、体を激しく突き動かしていく。
それは青学への想いを秘めた熱情、冷静を湛えてかつ何よりも高い熱量で燃えさかる青き炎を纏ったかのように。
ゲームカウント36-35
跡部くんにリードを許したその時、
零式の構えに入った国光のフォームに、わずかばかりの違和感を覚えて… 本来の残像と鈍って見える。
バックスピンがかかるはずの零式が、
戻らない…?
跡部くんがダイビングで飛び込み、返球されたボールをバックで返した国光のそれは、無情にもネットに阻まれたのだった。
『ゲームセット、ウォンバイ氷帝学園跡部!!ゲームカウント7-6!!』
直ぐさま告げられたコールに、打たれた長い戦いの終止符、それは呆気ないほど簡単で。
鳴り止まない拍手の中、
国光の戦いが終わりを告げた。
「国光!」
私の声に振り返る、その顔は穏やかで、少しだけ安心した。大石くんの手からジャージを羽織り、
「お疲れさま。これ、アイシング」
「ああ」
ベンチの後ろ、他に掛ける言葉も見つからず押し黙る私に、
「心配いらない」と小さく。
「越前」
「…はい」
そして国光は、最終戦へ向かうリョーマにエールを送った。
「二ヶ月前、高架下のコートで言った事… 覚えているか」
“お前は青学の柱になれ”
あの日大和部長に託された想いを託して、
「リョーマ、任せたよ」
「ん」
帽子のツバを上げて、リョーマが笑った。
その顔が、これほど頼もしいと思ったことはない。
「…アンタに言われちゃ、しょーがないよね」
──そして、
危なげなく最終戦に勝利したリョーマの一戦で、青学の二回戦進出が決まった。
「…国光、」
「何だ」
私は毅然と立つ国光に目線を送れないまま、
「終わったらすぐに病院…」そこまで言って口を閉ざしたのだった。